スマホとぞうきん8


sumaho&zoukinmini

クリスチャン・マークレイは二枚に割ったレコードを繋ぎ合わせて回した。ヤン富田はターンテーブル上のドーナツ盤の上にドーナツを積み重ねて回した。美術家の八木良太の作品には、レコードを型取りし水を凍らせて作ったレコード状の「氷」をターンテーブルの上で溶かしながら回すものがある。電気グルーヴは「ターンテーブルで猿回し」と歌った。

アナログレコードとは何かと考える時、結局それはCDと比較した音質の良さ/悪さではなく、ターンテーブルの上で「何でも回せる」ことに帰結するように思う。CDやMP3の上で、上記のように何かを回すことは難しい。OvalによるCDの盤面にマジックで線を引きそのノイズを音楽化する試みや、グリッチノイズなど、デジタルならではのエラー的な表現はあり、単に音質やデータ量を比較するよりも、むしろそれを用いて引き起こされる事件や事故について考えた方が、レコードとCD、MP3との差が明確になるのかもしれない。

2014年APHEX TWIN久々の新譜『Syro』リリース時に出演依頼があり、配信番組DOMMUNEでDJを担当することになった。APHEX TWINが犬小屋にこもったまま出てこなかったという第一回目のフジロックのエピソードを参照し、ダンボールで小さな「犬小屋」を自作しターンテーブルの上で回転させたまま、DJブースの下に15分間隠れ続けた。

APHEX TWINが戦車を所有しているという有名なエピソードがあるが、その文脈で、モーターで動く小さな戦車をターンテーブルの上で走らせたりもした。戦車は暴走しターンテーブルをはずれミキサーにまで侵攻してきた。暴れる戦車を見て、ターンテーブル上に積み重ねたドーナツが自重と遠心力で倒壊するというヤン冨田のパフォーマンスを思い出した。

あれも広義にはレコードDJだったのかもしれない。

inugoya

(これがその犬小屋です)