皆さんお待ちかね、谷本大河によるコラム「チャラい音楽から入ってもええじゃないかええじゃないか」第2弾。
前回は「チャラい」ことは悪いことばかりではなく有益な面もあるが、ミュージシャンは「チャラい」ことと上手く付き合っていかなければならないという話をした。
今回は具体的に「チャラい」音楽(あくまで個人的な見解)を紹介していく。ここでいう「チャラい」音楽とは、前回も記述したようにあくまで「わかりやすい」音楽である。一般の方でも聞きやすい曲がラインナップされてるから、ぜひチェックしてみてほしい。
さて、前回の最後に宿題として紹介していたアルバムがこちら…
「Eddie Higgins Trio」による「BEWITCHED」である。編成は所謂”ピアノトリオ”という編成でピアノ、ベース、ドラムの3人だけで構成されておりリーダーがピアノ奏者のEddie Higginsなので「Eddie Higgins Trio」という名義になっているJazzのアルバムである。
さて、このEddie Higginsのピアノを筆者も久しぶりに聞いたが…
チャラい!!!!!!!(いや、良い意味だよ)
まさにカフェで流れてるJazzってこんな感じではないだろうか!!!!
カフェでいろいろとよく分かってなさそうな若者達が「なんかオシャレ〜」とか言ってそうである!!!!(だから、良い意味だからね)
ではなぜEddie Higginsが「チャラい」と思われるのかを解説して行こうと思う。(あくまで個人的見解)
Eddie Higgins(1932年〜2009年)は米国マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれの白人Jazzピアニストである。
まずヒギンズを語る上で絶対的に外せないのが……”ピアノタッチ”である。
“ピアノタッチ”とはざっくり言えばピアノの白鍵や黒鍵を押す強さだと思って欲しい。
一般の人からすれば鍵盤を指で押す強さでそんなに違いがあるのだろうか??と思うだろう。
この人を聞いてもらいたい
Oscar Peterson(1925年〜2007年)。卓越した技術で生涯黒人のソウルミュージック「BLUES(ブルース)」を演奏し続けた筆者も大好きなJazzピアニストである。
彼のプレイを聞いてくれれば分かると思うがピアノタッチが強烈である!!
黒人は元々リズムに強いからか「ピアノは打楽器だ!」という人もいるぐらいだ笑
それに比べてヒギンズのプレイをもう一回聴いてほしい。驚くほどにピアノタッチが柔らかいのだ!!
どっちかというと日本人はヒギンズのようなピアノタッチに惹かれる人が多いように思う。
プレイスタイルもオスピー(Oscar Petersonの略)は圧倒的な技術で弾きまくるのに対して(もちろんオスピーも繊細なプレイもできる上での話)ヒギンズは無理は絶対にしないでシンプルなメロディを紡いでいく。
ヒギンズのプレイは聞こうと思えばどこまでも深くまで聞けるし、誰かと会話してる時には会話の邪魔をしない、まさに「カフェJazz」の金字塔なのである!!!
ヒギンズがプレイする曲はJazzのスタンダードナンバーが多いので、Jazzを聴き始めたいという人はEddie Higginsから始めるのはどうだろう??
続きましてはこの曲…
Grover Washington Jr.(1943年〜1999)の「Just the two of us」。
この曲はまさにこの「チャラい問題」
の筆頭に上がるチャラ曲界の金字塔といっても過言ではない。(褒めてます)
Grover Washington Jr.は1971年にデビューしてから亡くなるまで第一線で活躍したSax 奏者であり、スムースジャズの礎を作った人物と言われている。
そんな彼の最大のヒット曲が1982年に発表した「Winelight」というアルバムに収録されている今回のチャラ曲「Just the two of us」だ。
「just the two of us」にはゲストボーカルとしてBill Withersが招かれており、「Just the two of us」自体の作詞作曲もBill Withers,Ralph
MacDonald,William salterらによってされている。しかし、Grover Washington Jr.のアルバムに収録されているため名義はGrover Washington Jr.になっているみたいだ。
この曲はBillboard Hot 100で2位をとったりグラミー賞とったりとにかくヒットした曲で、あのウィル・スミスもサンプリングで使ったり日本では久保田利伸さんもカバーしたりと曲の知名度が伺える。
とまぁここまでの話を聞いてるとただのヒットソングの話なのだが、この曲の肝になるのがこの曲のコード進行…名付けて
「なんちゃってクソオシャ進行」(とても褒めてます)
とでも言うのか笑
とにかく印象的なコード進行をしていて一般の人が聞けば大体の人が「オシャレ〜ジャズっぽい〜」という印象を受けるはず。
確かにJazzっぽいコード進行ではあるのだが、割とシンプルなコード進行なため誰でも真似しやすく、使えばすぐに小洒落た感じになるので本質を分かってない人でも勝手にJazzっぽくなってしまうという危険を伴っている。
まさに前回書いた本質も何もないミュージシャン=チャラいミュージシャンになってしまう可能性があるのだ。
しかし冒頭でもチャラいということは悪いことだけではないと言っていた通り、コード進行がチャラい=分かりやすいコード進行ということだ。
へぇ〜と思ったみなさん、実はみなさんもこのコード進行聞いたことがある人も多いはず。
「なんちゃってクソオシャ進行」実はJ-POPでもたくさん使われている上に、しっかりと売れた実績があるのだ。
実際にあげていくと…
・東京事変/丸の内サディスティック
・東京スカパラダイスオーケストラ feat 奥田民生/美しく燃える森
・決戦は金曜日/DREAMS COME TRUE
などなどあげていけばキリがない。
そう、この「なんちゃってクソオシャ進行」はもはや我々の生活の一部に入っていてもおかしくない存在なのだ!!!
元はと言えばGrover Washington Jr.の「Just the two of us」で生まれたコード進行が時代を超え国を越えて日本人のポップミュージックになっているということを、これを読んで下さっているみなさんに少しでも伝わればと思う。
という事で今回はここまで!!!今度はあるのかな!?次回はあるのかな!?乞うご期待!!!
(つづく?)