エレキな夏


さかのぼること2016年正月。初詣の仕事を終え次に向かったのは、周防大島の「成人式の講話」なる仕事でした。

「……荒れる成人式。」

頭に浮かんだそれを払拭することが出来ないまま会場へ向かう。
そこには、活きのいいみなさんが集まっていました。

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中学生時代はいじめられっ子でした。

授業が終わるごとになぜか同級生の肩に担がれて、行きたくもないトイレに連れて行かれる。掃除の時間は必ずジャイアントスイング。
女子からは男子と認識されず小動物のカテゴリーに分類されていると、いつか教えられました。

夏。同級生に力づくでBOOWYのコピーバンドの「キーボード」担当に指名されました。

「お前やれ。」

(……BOOWYにキーボードいたっけ…。)

頭に?マークを浮かべながらも、初めて向かう練習スタジオ。鍵盤は習ったことがありません。ギターもこのときまだ手にしていません。でも心はどきどきわくわく、喜びに包まれていました。

ワンツースリーフォー。

「ジャジャジャッ、ジャーー」「しゃわーあ、を、あびぃいてぇええ」

……テケテ テケテ テケ テケテ……

「おかしいな。」 初めて触る、やけに鳴らないキーボード。

10年後にようやく気づきました。
エレクトリックピアノ「フェンダーローズ」をアンプラグドで弾いていたとんちんかんは私です。

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疑念だらけで始まったバンドマン生活は結果20年近く続きました。
思っていた大人像とまったく逆方向に進行。
パンクという大空に舞い上がったあとの「着地できない髪型」「堕落する私生活」。
そんなマイユースカルチャーをひっさげて、成人式の壇上で話しはじめました。

「しーーーん。」

どうしたことでしょう。金髪のあの子も怖そうなあの子も、ものすごく真摯に聴いてくれています。
この島の環境がそうさせてくれているのかもしれない。

みんなの優しい眼差しを眺めながら、思い出しました。

銀杏BOYZのギタリストとして過ごしていたさなか、大金をにぎりしめフェンダーローズを家に買って帰ってきたあの日のことを。
銀杏BOYZ。いつか来る出番を待ち、一度も使わずに売ってしまったフェンダーローズ。

「そうか。あれは、復讐だったんだ。」

今こそ、中学生のあの日の僕に言ってやりたい。
「電気~!」

 

(第2話おわり)

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今後の予定
4月2日(土) 島のむらマルシェの「朝マルシェ」
5月15日(日) 森田真生「数学の演奏会 in 周防大島」
6月中旬 南高梅の収穫

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