もみ殻くんたんタン


ついに出た、STEREO RECORDSコラムきっかけでの「畑の視察」。

先日、滋賀の肥料屋勤務の男性が周防大島に忽然と現れたのだった。その名も「猪熊くん」。獣害のような名を持つその青年。

彼はこちらのホームページで僕の消息を初めて知り、「周防大島」というキーワードだけをたよりに訪ねてきたようなのだ。

彼の作戦は、「島上陸」→「酒場で情報を入手」→「自転車で探索」→「発見」。そういうプランだった。

 

おーい。

ちょっと勘違いしやすいのですが、周防大島は、結構デカい。移動するにもなん十キロ単位でかかるし、島に中村のつく人はたぶん5000人くらいいるだろう。
彼は偶然島のライブバーにたどりつき、たまたま経営者の吉田さんが僕を知っていたのでメールをくれるも、僕はしばらく気づかなかった。そして数時間後—。

 

そこには、見知らぬ青年と、見知らぬおじいさんがいました。

かくかくしかじか、上記の経緯。要するに、青年と妙齢の紳士が、トラックに乗ってやってきたという状況。

 

猪「あまりに手がかりがなくて、道端で座ってたらこの方が親切にトラックにのせてくれたんです。」

 

珍「はじめまして、この度は親切にありがとうございます。どうして彼をのせたんですか?」

 

紳「いやあどうも。」

 

今まで島で会った人の中でも最大級に優しい方とすぐわかった。青年を乗せて、島をしばらく案内してくれたそうだ。

 

紳「これも何かの縁。このトラックね、使いたいときあったらいつでも貸してあげますけえ。」

 

トラックの話を突然。何だろ? いや・・・まて・・・。

 

珍「それは、ダンプですか?」

紳「はい、ダンプです。」

 

・・・・・・。

 

 

その日、友人たちと運営する新しい畑で、堆肥を運ぶ予定をしていた。が、当初算段していたダンプが手配できなくなって困っていたところだったのだ。なんか猪熊くん。すごいな。

 

珍「あの早速ですみませんが、そのダンプ、貸していただけ・・・」

 

紳「ああ~どうぞどうぞ。」

というわけで、いただいてきました。

 

猪「『もみ殻くん炭』を作る機械の会社で働いていて・・・」

 

猪「米どころって、もみ殻めっちゃでるんですよ・・・」
猪「もみ殻って、産業廃棄物になっちゃうんですよ・・・」
猪「だから、もみ殻を利用できるように・・・」

もみ殻に生きる男。

肥料を提供するのに、実地の農業経験がほとんどなかった、と。

有機質肥料事情に詳しい彼と、そして基本、肥料を使わない栽培に取り組むこの畑の従事者・村上さん、そして僕。クワの使い方、圃場の整備の仕方と、それらの理由。ひとつひとつみんなで丁寧に作業していった。

滋賀県在住の彼が、なぜ広島のレコード屋さんのHPから畑の視察に現れたのか、今もって知る由もない。

その日、ダンプを貸してくれたおじいさんに篤くお礼を申し上げた。

後日、僕の家にはおじいさんからの「鮮魚」の入った、どでかい発泡スチロールの箱が玄関に置いてあった。あれから、現在もそのおじいさんと交流が続いている。

※1 『もみ殻くん炭』: もみ殻を炭化させたもの。土壌改良剤として使用される。

【お知らせ】

2017年7月25日(火)18:00‐ YORIMICHIBAZAR vol.6

《内田樹×森田真生 『真夏の対話会』 -周防大島サマースクール序-》開催します。http://yorimichibazar.com

2017年7月29日(土)16:00- 松山・柳井町商店街

《かもん夜市》 和田ラヂヲ・中村明珍・ガッツムネマソ トーク出演&出店します。https://www.facebook.com/871st/