スマホとぞうきん41


sumaho&zoukinmini

ヤン富田は重ねたドーナツを。電気グルーヴの歌詞なら猿を。DJまほうつかいはダンボール製の犬小屋を。中華料理店なら大皿料理を。一時期「ターンテーブルの上に何を乗せて回すか?」についてよく考えていた。ターンテーブルに乗るものが、必ずしもレコード盤とは限らない。いっそ音楽でなくてもいい。

7inchレコードを45回転にするか33回転にするか、結論が出ないまま、それと並行して個展に向けて立体物を制作している。自著『すべてがちょっとずつ優しい世界』に登場するキャラクター「ぼうや」を立体にしようと、半年ほど試行錯誤。試作として10センチほどのサイズの石膏のフィギュアが仕上がった。

3Dプリンターで出力した座りポーズの「ぼうや」人形の中身は空洞で、底面つまりお尻の部分に穴が空いている。その穴を見つめながら、「もしかしたら・・・?」と思い、そっとターンテーブルに乗せてみた。

穴は約7mmのターンテーブルの回転軸にほぼぴったり収まり、「ぼうや」人形は33rpmのターンテーブル上でかわいらしく回った。もう少し早くしてみようと回転速度を45rpmにしてみると、今度は遠心力で倒れてしまった。

この実験を経て、リリース予定の7inchはA面B面ともに「33rpm」とすることに決めた。より多くの曲が収録できるという利点もあるけど、決め手となったのは「人形が倒れるか、倒れないか」だ。音楽以外の理由で音楽のルールが決定されることもある。ターンテーブルの上で回るものが音楽だけとは限らない。