スマホとぞうきん11


sumaho&zoukinmini

菊地成孔のアルバム『Degustation a Jazz』は不思議な音楽集だった。タイトルは「ジャズの試食」の意味で、一皿一皿つまみ食いするように1分、2分くらいの短い曲たちが41曲も詰まっている。

試食といえば、当然今日ではレコード/CDショップ以外でも音楽の試聴はできる。YOUTUBE、Soundcloud、iTMS。試しに聴いて気に入れば全尺動画を辿り、場合によってはパッケージを購入。10年前はそうではなかった。もっとショップで聴いていた気がする。

日本のインディーズ音楽を知りたい時、ハイレゾ配信サイトOTOTOYの試聴をよく活用している。アルバム、シングルを問わず、全ての収録曲の曲の頭から30秒後あたりを起点とし45秒間の尺で試聴することができる。デパ地下の試食のような感覚。それだけで全体像は掴めるし、買おうと思っていたアルバムなのに試聴だけでお腹いっぱいになってしまったこともある。

『Degustation a Jazz』はこの音楽視聴環境の先取りだったのかなと、発表後10年を超えた今頃わかったような気がした。試聴時間が45秒ならば、一つの実験として45秒以内の長さの曲だけでアルバムを作るのも面白いかもしれない。試聴ですべてが完結してしまい、買う必要のないアルバム。