スマホとぞうきん7


sumaho&zoukinmini

『キック・アス』の原作コミックを読んだとき、違和感を覚えたのはMyspaceが出てくるところ。あくまで音楽配信サービスだと思っていため、『キック・アス』で描かれていたようなFacebook以前のコミュニケーション目的のSNSとしての側面があることを全く知らなかった。日本語翻訳版が刊行されたのが2010年。その時点で、少なくとも一ユーザーの感覚として既にMyspaceについては下火という印象があった。

https://myspace.com/djmahoutsukai

久し振りに自分のMyspaceを覗いてみると、更新は2011年で止まったまま。まだピアノ曲をリリースする前、2010年前後の音楽的興味が真空パックされている。映画『ターミネーター』テーマ曲のチープなカバー曲や「魔法組曲」と名づけられたシンフォニックメタル調の試作曲など自分でも忘れていた音源が残っていて恥ずかしいけれど、ログインするためのパスワードを忘れているから消すことができない。

MyspaceからSoundcloudに移行したのは2011年。アカウントを開き、主にピアノ曲の作曲ためのスケッチをアップロードしている。

https://soundcloud.com/djmahoutsukai

しかしMyspaceと同様にログインパスを忘れてしまったSoundcloudもある。予備アカウント「djmahoutsukai2」だ。こちらは2012年前後で時が止まったまま。
「フリージャズ」「卒業」をテーマに作ったDJmixのほか、「鍵盤と偶像」と称したピアノによるプロデュース(カラオケトラックではなく、譜面と伴奏者の生演奏によってアイドルを成立させる試み)の歌唱指導音源が消すこともできずに残っていている。「こんにちは、みなさんちゃんと練習してますか?」と語りかけで始まるこのレッスン音源はかなり恥ずかしい。

これ以上の更新はないし、どうせ誰も見ないと割り切ることもできる。しかし少数ながらそれでも誰かが見ているし聴いている。ごく一部にだけ共有され、捨てるに捨てられない。パスワードを忘れ放置されたままのアカウントは、卒業アルバムのようだと思う。