所属レーベルの担当者とアナログレコード盤リリースの可能性について相談したことがある。これまでHEADZからは二枚のEP(CD)と、一枚のアルバムをリリースしているが、今のところアナログ盤のリリース予定はなし。予算的にも、売り上げ的に難しいという当然の判断。しかし、担当者は「絵がよいので、アートワークが大きくなることでうれしいファンはいるはず」とも言っていた。
先日好きな音楽家のドーナツ盤を買ったらCDが付いていた。レコードでしか聴けないという制約より、レコード再生環境がなくても音楽を聴けるという購入者への親切さの優先。針を落とさなければ聴けない、いやむしろ聴けなくても満足、という覚悟を持って購入したが、結局PCに取り込んでiPodでも聴いている。それはとてもありがたい反面、これは音盤なのだろうか? それともグッズなのだろうか? と不思議な気持ちになる。
90年代末のMURO『THE VINYL ATHLETES(真ッ黒ニナル果テ) 』や、ジェーン・バーキンのベスト盤(サンプルCDだけだったかもしれない)は、7インチレコードを模したジャケットにCDを収める「ドーナツ盤風CD」だった。あのレコードともCDとも言い切れないあいまいな感じを思い出した。
レーベルとの議論の果てに出てきたとりあえずの結論は、「だったらグッズとしてLPの外ジャケだけ作ろう。レコード盤はプレスせず、中にCDを収めるだけの12インチの紙ジャケを生産。プレス代はゼロ、印刷費しかかからない。でも気分はLP風。インテリアとしても機能する」というもの。グッズとしての盤抜きLP。音盤ですらない。
そういえば、まさにそんな作品をこれまでに三度作ったことがある。音楽とイラストレーションをテーマにした「MUSIC ILLUSTRATION AWARDS」。一度目の参加は2011年(展示は2012年)。当時アートディレクションを担当していたメジャー・アーティストAZUMA HITOMIを題材に、70年代の邦盤LP風の帯をつけて展示した。ジャケから見えない中身も大事ということで、100円で買った無関係なレコードにそれっぽいラベルを貼って盤も作った。小さくダウンロードコードを記載し、自発的に作ったREMIX曲をSoundcloudにアップして聴けるようにした。
同展示には2014年にも参加し、今年2016年にも参加している。今年の展示に寄せた作品タイトルは「Nighty-Night」。実は既に録音と選曲が終わってマスタリング待ち状態の2ndピアノアルバムのジャケットを描いた。音楽の外側をテーマにした展示だが、ついつい中身を作ってしまうことが楽しい。