CDが売れなくなった一方でアナログレコードのブームが来ている。そんな話をよく聞くが本当だろうか? プライベートな空間で音楽を楽しむソフトとして、コンパクトディスクはレコード盤の代替物として現れたと思う。しかしCDが売れないことの反動でレコード盤に戻るということはあるのだろうか?
CDとレコード盤はとても似ている。どちらも円盤で、それを回転させることで音楽が再生される。盤面の傷を気にするという、データ再生と比べて滑稽なほどフィジカルな行為も。ジャケットや歌詞カードがある点も同じだ。
そもそもCDとレコードという対比がとても狭いのだと思う。2012年にBECKが「楽譜」という形でアルバムをリリースした。これは、CDかレコードかという狭い二択から離れ、音楽をもっと広く考えるための行為だったと思う。レコード以前から演奏や楽譜、鼻歌ですら音楽は再生されていて、CD以降の世界であってもMP3でストリーミングで、あるいはそれ以前と同じ方法で音楽は再生され続けている。
ジョージ・ミラー監督作『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)で、エネルギーが枯渇した世界でささやかに響く音楽として再生されていたのは、手巻きのオルゴールだった。CDが再生できない電気不足の世界ならば、レコード盤だって鳴らせない。しかし、手巻きオルゴールならエネルギーが無くても繰り返し音楽を再生することができる。CDが本格生産される直前の1981年に公開されたシリーズ二作目『マッドマックス2』にもやはり手巻きオルゴールは登場し、荒野で音楽を奏でていた。
オルゴールや楽譜を眼差しに入れれば、CDとレコードは大差なく思える。そんなことを考えながら、新曲として「穴の空いた紙」をリリースした。CDでもレコードでもDLコードでもない、手巻き式のオルゴール用再生ソフトとしてのイラスト付きの穴の開いた紙。Youtubeに2曲視聴動画も上がっている。
考えが一周して、このオルゴールの音色をCDに収めるべきなのではという気もしてきた。安易な企画と感じていたユーミンやクラシック曲のオルゴールアレンジCDが、とても過激な試みに思えてきて不思議だ。
(紙巻きオルゴール漫画_DJまほうつかい「Last Summer」)
(紙巻きオルゴール漫画_DJまほうつかい「Before I Forget)